万有引力
劇底二万哩

台本 高取英/根本豊
台本・演出・音楽 J・A・シーザー
出演 中村亮/松丸純子他
吉祥寺バウスホール

●柿おとし

バウスホールでもいろんな作品を見ているが、万有引力ほどはまる劇団はない と思う。劇団側もそれを諒解しているのか、秋にも同劇場で公演を行なうようだ。 昨年のエジンバラ・フェスで好評を博した「SUNA」も、「砂漠の動物園」と 題した初演はバウスホールだった。タッパのある劇場空間とロビーまでも芝居の 場として取り込めるという機構を利用して、最近の万有引力の代表作にしていた。 今回も鉄パイプで組んだジャングルジムのようなセットで、まず我々を楽しませ てくれる。しかも劇の冒頭では巨大なあやつり人形がさも生きているかのように、 舞台中央にぶらさげられていて、これからの芝居に期待感を持たせてくれる。後 はシーザーの魔術に身をゆだねていればいいというような、気持ちの良い公演だっ た。ジァン・ジァンの天井棧敷公演「観客席」の本番中に失踪した俳優と、現在 のバウスホールで出会うという発想も面白い。もっとも“ぴあ”には、紀伊屋ホー ル公演「レミング」で失踪と出ていたが…。それはさておきバウスで出会ったふ たりはどうなるかというと、劇場の地下にある別の世界へ、冒険に旅に出ていく のである。そこには根本豊演じるネモ艦長がいて…、というパロディもきまって いる。牧野公昭の退団、矢口桃、高田恵篤の休団によって肉体派のイメージは後 退してしまっているが、シーザーの劇の仕掛け人としては、ますます磨きがかかっ てきたようだ。ただ気持ちが良すぎるというか、こんなに気楽でいいのかなと思っ てしまう余裕を観客に与えてしまうのは、あまりいい傾向ではない。次回「昆虫 記」では是非毒の花を咲かせてもらいたい。(87年6月28日、マチネ)


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