万有引力
大疫病流行記
作・演出 寺山修司
演出・音楽 J・A・シーザー
出演 瀬間千恵/蘭妖子/他
SPACE ZERO
5月7日まで
●鎌滝雅久
寺山修司が83年の5月4日に亡くなって10年目にあたる今年、命日を中心 に様々な追悼企画が組まれている。演劇部門でトップを切った万有引力の公演を SPACE ZEROに見に行った。
舞台は、かつて日本軍が占領していた中国系の国の港町。そこへ「わたしはあ なたの病気です」と語る少女が現れたことで、街に疫病が蔓延していく。キャバ レー“商船パゴパゴ”の女主人(瀬間千恵)は、その街で権勢をふるう実力者だ が、疫病蔓延の謎とも繋がる秘密の過去を持っているらしい。一方、南方に憧れ 自分たちの乗り込む船を永遠に待ち続けているふたりの男(根本豊、高田恵篤)、 さらに戦時中に病原菌を使った生体兵器の研究をしていた元日本兵(水岡彰宏) が絡み、物語は迷路のように枝分かれしていく。
謎に満ちた物語の面白さは、ほぼ解決することなく終わるが、我々の想像力を 大いに刺激してくれる。加えて、寺山演劇の素晴らしさは、J・A・シーザーの 音楽、小竹信節の舞台美術などスタッフ・ワークも、想像を越えたものを提出し てくれるというのもある。初演は75年であるから、当時のことをうかがい知る ことはできないが、小竹の“首で回すプロペラ”など“民間医療機械”と呼ばれ る不思議な機械群は当時の雰囲気を伝えてくれる。しかし、万有引力がこれまで 上演した天井棧敷時代の作品「奴婢訓」「レミング」が再現的再演とすれば、今 回の公演は、75年の初演作品とは離れ、SPACE ZEROという比較的大 きな空間を利用し、寺山演劇のスペクタクル性を継承して見せてくれたと言える だろう。少なくとも、当時“密室劇”という形容詞で言われたことは、今回の公 演からは想像できない。中央の白木でできた舞台を囲むように上下(かみしも) には櫓が組まれ、また観客席の後方にも木製のコンテナが置かれている。商船パ ゴパゴの女主人が、上手観客通路から大音響の呪術的なシャンソンを唄って現れ るかと思えば、ひとりの少女が観客席後方のコンテナの上で、「わたしはあなた の病気です」と呟く。劇場全体をアクティング・スペースとして使う手法は、ま さに“こう使え”という見本を見せてくれたようなものだ。
また俳優の肉体を駆使した、バイオレンス的な動きが、舞台のスペクタクル性 に一役買う。小竹の不思議な機械も彼ら俳優の肉体と一体となった時に、いっそ うの威力を見せるのだ。観客は、照明や音楽や俳優の激しい動きに幻惑されなが らも、舞台の上に引きずりこまれていく力強さを感じたはずだ。一瞬にして舞台 が変貌するラスト・シーンは、見る者に様々な思いを抱かせ、必見だ。(93年 5月2日ソワレ、2h)
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