二十一世紀歌舞伎組
雪之丞変化2001年
原作 三上於菟吉
脚色 横内謙介
演出 市川猿之助
出演 中村信二郎/市川右近他
PARCO劇場
9月24日まで
●柿おとし
市川猿之助が、一門の若手俳優に活躍の場を与えようというのはよくわかる。 世襲制度や因襲が強く残る歌舞伎の世界に強い反発を感じているのも彼ならでは だ。ストレートに歌舞伎界を批判する台詞も、飛び出すのだから猿之助は相当に シビアな位置に立っているのだろう。しかし、芸術家たるもの実際の舞台で判断 されるのも一方で覚悟しなければならない。正直に言えば、原作を生かしきれず、 しかも新鮮な感覚も提出できなかった舞台になってしまった。まず脚色に問題が ある。荒唐無稽であることは、もちろん悪いことではないが、一方で舞台上での リアリティは保って欲しい。アイデアは猿之助か横内謙介かはわからないが、ア イデア倒れと言われても仕方のない出来なのだ。原作の「雪之丞変化」は女形に 身をやつした雪之丞の復讐の物語。猿之助、横内のアダプテーションのポイント は、その復讐に疑問を投げかけたところにある。雪之丞は、父親を陥れ、死に追 いやった土部三斎の娘浪路を愛してしまう。これは原作通りだが、雪之丞の仇討 ちを助ける義盗の闇太郎を宇宙人に設定。窮地に陥った雪之丞と浪路を宇宙に逃 すという展開にした。闇太郎を狂言回しに使い、宇宙人という客観的な立場の人 間との意見のやり取りで、復讐のむなしさを悟っていく雪之丞というのはいかに もな人物像でこのあたりはあまり面白くない。で、これで終わっちゃうと、あれ 復讐の物語はどこへ行っちゃうの、という気持ちになってしまうのだが、ところ がこの後に、ちゃんと見せ場は用意してあって、江戸に戻った雪之丞は、三斎に 捕らえられ、いやが上でも本懐を遂げる運命に引き込まれていくのだ。一度、 「雪之丞変化」という物語から逃れたかに見えた雪之丞が結局自分の運命をのろ いながら、血みどろの復讐を遂げるというのは、実に歌舞伎的で、唯一猿之助が 本領を発揮し、横内も冴えを見せた場面であった。復讐に疑問を投げつつも運命 からは逃れられない悲劇というのは、物語としても見れるものだ。ほんとこのワ ンアイデアだけで勝負してくれても十分に面白くできたのにと思うのだが、この 他に、輪廻天生しちゃって、2001年に雪之丞が蘇るなんていう設定は、全然 いらないぞ。白塗りでバイクに乗るなんて、実にナンセンス。右近(闇太郎)の かっこよさ、笑也(浪路)の美しさもどっかにいってしまうな芝居で、企画の段 階での練り直しが不十分が命取りになったしまった公演だ。(90年9月、 2h15+休憩15)
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