カッコーの酢の物で
作 加藤千恵
作・演出 高平哲郎
出演 坂本あきら/よね子他
THEATER/TOPS
8月7日まで
●柿おとし
夢の遊眠社の公演「彗星の使者」が台風8号による雨のために中止になってし まい、急遽「カッコーの酢の物で」の初日に駆けつけたが、アタマ10分程欠け てしまった。ご容赦願いたい。もっとも後から取材した範囲では、特に作品の評 価を左右するような場面は無かったようだ。主演は東京ヴォードヴィルショーの 坂本あきら。タイトルを見て、ご想像の通り、「カッコーの巣の上で」が基になっ ており、坂本はある日突然、精神病院に閉じ込められたラジオという男の役だ。 彼は、なぜ自分が病院に閉じ込められたかわからないまま、女医(松金よね子) らの奇妙な精神療法に付き合わせられていく。それはとんでもないもので、患者 用に見せる「愛の超念力」というCATVのバラエティ番組だったり、患者の妄 想をシミュレーションするものだったりするわけだ。いささか月並みな構成だが、 そういった“ゲーム”の中から、彼の精神の病が明らかになっていくという筋立 てだ。月並みなとは書いたが、世の中普通以上のものはなかなかないことを考え ると、「あなただけ今晩は」に続く加藤千恵の作品だが、筆者の実力はある程度 認めていいのではと思う。場面転換が多いのは、映像出身のさっかとしはしょう がないとしても、これからはなるべく少なくした方がいいだろう。場面転換は演 出の高平哲郎の苦労がわかったが、それでもカバーしきれない無意味な暗転がま だまだある。作品的には問題作たらんという真面目さに好感を持った。ラジオの 病因がわかってくるに連れ、現代人病という訳のわからないものを追及しようと いう姿勢が見られたが、なんか中途半端である。こういった作品の場合、おもし ろ可笑しく笑わせて、ぞっとさせて落とすというパターンがベストだが、やはり それは難しいのね。先に東京ヴォードヴィルショーの坂本あきらと書いたのは訳 有りで、同劇団脱退後の渡辺信子(現WAHAHA本舗)との初共演がこの作品 だった。彼女たちの脱退劇には坂本がかんでいるというのが、もっぱらの噂で、 劇中思わず渡辺が“やめてよかった。東京ヴォードヴィル”と叫ぶ場面があって、 今の両劇団の立場を考えると、なかなか意味深な台詞である。しかしふたりとも 自分の劇団の時よりもはるかにいい芝居をしている。(88年8月2日、ソワレ、 2h)
「PLAY BOAT」ホームページへ
「初日通信」データベースのページへ