青年団
思い出せいない夢のいくつか

作・演出 平田オリザ
出演 緑魔子/木之内頼仁/平田陽子
シードホール
2月15日まで
相鉄本多劇場(2/19・20)

●鎌滝雅久

ドサ回りの女優(緑魔子)とマネージャー(木之内頼仁)、そして付人(平田 陽子)の3人が、夜行列車に揺られながら過ごした1時間の出来事。まさにこれ だけの物語なのだが、3人の関係の微妙な綾をたどっていく内に深みが判ってく る。しかも3人の関係は、このたった1時間の内に大きな変貌を見せてしまうの だ。

芝居が始まって間もなく、りんごについてのやりとりがある。女優の由子が席 を立つと、マネージャーの安井が、鞄の中からりんごを取り出して、付人の貴和 子に勧めるのだ。彼女は断るが、安井はりんごを無理やり口にくわえさせる。さ らにいつも果物ナイフを持っているという、彼女の言い訳が鋭い。彼女は“刺さ なきゃならないとき”があるという。しかもその対象は、“男の人とか”なので ある。ここから、突っ込めば、突っ込むほど、女優の由子も含めた3人の関係の 危うさが想像できるではないか。つまり、安井と由子の長い間の愛人関係が崩れ はじめ、裏では女同士の激しい火花が散っているわけである。また、ある話題に ついて、自分だけが知らないと、相手への激しい嫉妬を燃やすという場面もある。 それらの悪意が、さりげない会話の中に埋もれながら、フツフツと燃えているの だ。ところが、平田オリザの脚本がひと筋縄ではいかないところは、そういう単 純な対立だけではないという点だ。由子には、20も年下の貴和子へ嫉妬する若 さとともに、目前に迫った老いという現実感もある。だから、貴和子への感情も、 敵愾心と愛情の間を激しく揺れ動きながら、ひとつの結論を導き出していく。今 回の「思い出せない夢のいくつか」は、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」がベースに なっているが、原作にある“死”と“宇宙”のイメージは、この由子の決心の部 分に凝縮して詰め込まれている。ドロドロとした愛情関係がいつのまにか、宇宙 の法則とともに昇華していってしまったのだ。

由子の緑魔子は、エキセントリックさを内に秘めながらの演技で、昨年の「ガ ラスの動物園」に続いて、抑制的な新しい“緑魔子”を見せている。緑、木之内 の間に挟まれると、さすがに平田陽子の演技的な幼さが目についたが、玄人受け のする作品を作り上げたと言えるだろう。(94年2月7日ソワレ、1h)

■観客参加劇AGUA GALAの「CAVE+CAPE+CAGE」は、まだ まだ仕掛けのみの実験劇。東京演劇アンサンブルの「風の又三郎」は、とっても インテリジェンスな賢治の世界だが、ナレーション的に過ぎる女教師など、まだ まだ改善の余地がある。でも高田三郎を演じた益井すお美の追っかけだからいい のだ。もちろん次の「かもめ」のマーシャも期待だ。そしてテキサス・リーガル ・ヒットを打ったのが一跡二跳の「ONとOFFのセレナーデ」。もっともこの 悲しさは、パソコン通信ファンだからこそかもしれないが。詳しくは、NIFT YのFSTAGE、6番会議室にアップした拙文に書いた。覗くことのできる方 は、そちらも見ていただきたい。


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