ショーマ
クラウド・ランド年代記
作・演出 高橋いさを
出演 加藤忠可/川原和久他
池袋西口公園テント劇場
12月4日から
シアターVアカサカ
●柿おとし
今週は、クリペの「オグ」に始まり、宮本亜門の「メアリー・チュアート」、 ステーション・ハウス・オペラ、東京サンシャインボーイズの「ブロードウェイ の生活」と力作が揃い、久々に面白い週だった。
その中でショーマの「クラウド・ランド年代記」だけが、出来がよろしくない。 まず、架設のテント劇場だが、東京芸術劇場に負けず劣らず、立派なテントで、 同劇場と並んで建っていると、なかなかの壮観だ。ただ不安だった音の面が案の 定、良くない。材質がビニール地なので、残響があって聞きずらいのだ。やはり テントは、布地が一番。さらに経費がかさむだろうとは思うが、台詞がうまく伝 わらないのは、いいことではない。それに外の音が結構気になる。バックにラブ ・ホテル街を控えるという結構なところにあるためか、物珍しげなアベックの格 好の遊びの種になってしまったのか、テントを覗くなどというのはまだかわいい 方で、テントに突進はするは、大声を張り上げるはで大騒ぎを繰り返していたの だ。これは終演後にわかったことなのだが、上演中は大声がシュプレヒコールに 聞こえ、時期が時期だけに過激派の騒ぎのようにも思えた(またタイミングよく パトカーのサイレンも聞こえてくるのだ)。まぁ、そんな大騒ぎの中で舞台に立 つ俳優陣はかわいそうだとは思う。しかし、それも芝居の出来が良ければ忘れさ せてもくれるのだが、高橋いさをの本にこれまでのキレがない。劇場を300以 上も持つ超高層の集合ビル、クラウド・ランドが舞台という発想には、彼らしい 超虚構的“ウソ”のつき方を感じる。かつて成功の絶頂で自殺を遂げた伝説の演 出家の死の謎を、その息子(加藤忠可の2役)が解きあかすという物語の展開も 期待を抱かせる。だが、今回の作品は一種のバックステージものだ。わくわくと するショウビジネスの世界が、展開されなければならないわけだが、伝説の演出 家星野京一郎の作る舞台が面白そうに見えないというのは、致命的だ。「やくざ 物語」とか「ウェートレス物語」とかいう舞台はネーミングからして、面白くな さそうで困ったもんだという気がしてしまう。いっそのこと劇中劇でもいいから、 これまでの名場面集でもやってくれれば、納得もできたかもしれないが。唯一、 面白かったのは照明器具一台一台に女性の名前をつける照明家山本大五郎(山本 満太)のエピソードだけ。そして致命的なのが、自殺の謎。京一郎は日記を残し ていて、当時の様子が克明に書き残されている。もし日記にもかけないような謎 ならばわかるが、普通の神経ならば××(とりあえずこれから見る人のために伏 せ字)のようなことは、日記に書いてあっても不思議ではない。演出家の神話が 崩れるような謎では決してないことが、この作品をつまらなくしている。
同じウソのつき方でも、東京サンシャインボーイズの三谷幸喜の「ブロードウェ イの生活」は、小さなウソの積み重ねで、西荻のブロードウェイ商店街にたむろ する大道芸人たちと本物のブロードウェイとの距離を感じさせない作品に仕上げ ている。高橋いさをも書けない人ではないはずで、今一度初心に戻ってほしい。 (90年11月1日ソワレ、2h)
■新宿梁山泊の金久美子が「シネマ探偵団」で紹介した韓国映画「狂った愛の歌」 で、このほどマレーシアで行われた“太平洋映画祭”で主演女優賞を受賞した。 同作は作品賞と脚本賞もとったようで、実にめでたい。後は日本公開を望むだけ である。
「PLAY BOAT」ホームページへ
「初日通信」データベースのページへ