東京乾電池
恋愛日記・増補版

作 竹内銃一郎
作・演出 岩松了
出演 松下泰知/広岡由里子他
駒場アゴラ劇場
6月9日まで

●柿おとし

オリジナルは秘法零番館の作品で、基になったのは86年の「恋愛日記'86 春」である(初演は84年)。タイトルは、トリュフォーの映画からいただいて いるが、内容は直接関係はない。むしろここで描かれる恋愛は、映画のようなかっ こいい関係ではないものの、日常の中にもドラマがあることを感じさせる。作中 の恋愛関係を整理すると、映画のシナリオ・ライターらしいオオスギ(谷川昭一 郎)は、キヌ子(広岡由里子)という妻がいながら、なぜか妹のカノ子(鳥山佳 子)とできていて、お互いのアパートを行き来するという二重生活をしている。 そしてキヌ子、カノ子にはそれぞれスズキ(松下泰知)、イシカワ(戸田昌宏) という恋心を抱く人物がいるという構成だ。もちろん、これはオリジナルの竹内 版そのままの設定だが、実はこの部分で作品全体の面白さの大部分を握ってしまっ ているので、ほとんど岩松了の増補部分と言うのは、ぼくにとってはあってもな くても同じものになってしまった。増補版は、さらに映画の撮影という虚構を大 枠に置いているのだが、今回は、俳優のつたなさもあるのだろうが、あまり生き たとは思えない。この設定だけで、ドロドロの人間関係が、極めて曖昧な状況の 中で成立してしまうという日本の奇妙な日常を見ることができてしまうのだ。そ れでも、岩松の演出らしいところを上げれば、わき役のスズキに重点を置いてい るところだろう。このスズキというのは、実はオオスギの友人で、キヌ子に惚れ ているはいるものの、オオスギの手前、本心を打ち明けられずに終わってしまう という人物。カノ子のアパートに乗り込んで、浮気をしているオオスギをいさめ るといった男気な一面ものぞかせるものの、自分の気持ちをキヌ子に伝えようと しては、身を引いてしまうという、基本的には弱い性格なのだ。竹内版では、ス ズキを演じた森川隆一の人柄もあって、好人物という印象が残っているが、そう はならないところが乾電池である。浮気をしているオオスギをいさめる場面では、 そこで行われているすき焼きパーティの火かげんから、味付けまでに口を出し、 いつの間にかパーティの取り仕切り役になってしまうという名場面はそのままだ が、へたなしゃれを言う女に対して、「もう一杯お替わりしちゃいますよ」とい う名台詞はない。

思わず懐かしさがこみ上げてしまった公演であると、劇場あらしに書いたのは、 鳥山佳子のカノ子を見ていて、森永ひとみを思い出してしまったからである。な お、主な配役を除いてダブル・キャストになっているため、カノ子は鳥山佳子で ない日もあるので、念のため書いておく。(6月2日マチネ、1h45)

■新宿梁山泊の製作の要、女優のA.K.が結婚しました。ファンの方一緒に泣 きましょう。


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